7月10日-24日に実施した新型コロナウイルス禍における西陣機業の経営実情影響調査の結果概要をお知らせします。(有効回答数78件)
1.最近3か月(4-6月)の受注の状況
コロナ禍での受注の落ち込み状況は、本年4-6月の調査対象期間内でのピーク時では前年同期に比べ65-75%のマイナスとする事業所がもっとも多く全体の20.5%で、次いでマイナス75-80%(同19.2%)と続いている。
4-6月の「ピーク時」に前年同月のほぼ半減以上に受注が落ち込んだ企業は全体の97.4%に達しており、それは本調査を実施した7月中旬の「現在」でも85.5%と高く、西陣機業はきわめて厳しい状況が続いているといえる。
落ち込みピーク時と調査時点「現在」の受注減少状況
なお、受注の落ち込みがもっとも高かった「ピーク」の時期は、5月とする事業所が47.4%でほぼ半数に迫っている。コロナ前の受注残があった4月は21.6%、6月は32.9%であったが、受注の落ち込みは調査時点(7月中下旬)も39.7%と高い水準で続いており、非常事態宣言解除後も厳しい状況下にあることが分かる。 注:2カ月、3カ月の重複回答あり
2.受注量の減少以外に受けた影響
受注量の減少以外に影響を受けた事項は、受注と直結する「販売会や催事の中止」がもっとも多く全体の73.1%に達しており、感染防止対策下での経済活動の自粛の浸透が顕著にでている。 以下これに次ぐものは、「納品のキャンセル(15.4%)」、「材料等の入手難/高騰(9.0%)」、「受注価格の切下げ(6.4%)」、「納品商品の返品(5.1%)」が続いており、さらに、納品の延期、得意先の廃業、取引先の経営蹉跌による貸し倒れ、テナントの廃業もみられた。
3.経営上いちばん困っていること
西陣機業がコロナ禍において経営上いちばん困っていることについては、「受注の大幅な減少」がもっとも多く全体の39.7%にのぼっている。「受注ゼロが3カ月続いてる」,「何の注文も無い」,「仕事が消えた」という悲痛な声も聞かれる。第2には、「資金繰りの悪化,運転資金に困窮」が14.1%であがり、さらに「先の見通しが立たない」と「今後の人手の確保,人手が不足」がそれぞれ10.3%で続いている。いずれもコロナ禍の厳しい経営実態を裏付けている。なお、少数だが値崩れや格安販売を訴える事業所もみられた。
4.活用した国や府市等の支援制度
深刻なコロナ禍に対して、国や自治体の支援対策の申請利用の状況については、持続化給付金がもっとも高く、現在まだ申請期間内ではあるが申請者は既に86.8%に達している。次いで、実質無利子の緊急融資47.4%、雇用調整助成金34.6%と続いており、ここでも西陣機業の厳しい経営実態がうかがわれる。
京都府や京都市の支援策については、伝統産業の特例処置である「京もの指定工芸品購入支援補助金
(5月実施))」と「伝統産業つくり手支援補助金(6月実施)」の利用がいずれも21.8%と高い利用申請で続いている。
5.今後の回復の見通しの時期
コロナ禍が収束し斯業が今後回復する時期の見通しについては、「以前の状況には戻らない」と見通すものがもっとも多く全体の42.3%に及んでおり、「来年春(16.7%)」「1年後(21.8%)」などを大きく上回っている。また、「その他(11.5%)」としては「分からない、見通せない(7.7%)」とするものが多く、次いで「1~2年」「2年」と続いている。
6.コロナ禍への対応、検討していること
西陣機業がコロナ禍で新たにとった対応及び今後検討している取組みについては、「生産調整、減産、時短調整等(15.4%)、「新商品開発、高付加価値商品づくり(14.1%)」の対応が多くなっており、さらに新販路の開拓、ブランディング対策、川下との協調、小売り進出など「販路開拓面の取組み」が8.9%で続いている。また、「ネット販売、IT活用販売等(7.7%)」、「テレワーク環境整備、リモート商談等(6.4%)」が続き、コロナ禍において非対面ビジネスによる新たな取り組みが急速に進んでいることが伺われる。 以上