第2回は、西陣金襴の製造・販売を行っている岱﨑(やまざき)織物さんの社長、山﨑徳子(やまざき・のりこ)さんにお話を伺いました。
──本日はよろしくお願いします。金襴の製造ということですが、どのようなものを織っていらっしゃるのでしょうか。
〈山﨑さん〉 はい。金襴といえば8割が法衣ですが、その他では金襴には表装金襴、人形金襴、裂地金襴があります。その中で主に表装金襴を織っています。掛け軸を想像していただくとわかりやすいでしょう。とはいえ、現在は人形や裂地としても卸していますし、きものに使っていただいた例もあります。
法衣を織ることもあります。
──西陣織が既存用途以外では使われづらい理由に、帯の幅があるといわれています。
〈山﨑さん〉 金襴には金襴幅という基準の幅があり、おおよそ帯の倍、72cm幅で織ります。金襴はもともと裂地として使うもので、そのまま使うものではありませんから広めなのです。そのため、現代では既存の用途に加えて、クッション、ランプ、靴、洋服、スリッパなど様々に使っていただいています。
掛け軸は巻いて収納するので、表装金襴は他の織物と比べ、薄くないといけません。そのため扱いやすく、他の用途にも使いやすい強みがあります。それに伴い、現在では通販やアパレルにも卸しています。
──ホームページには大正14年からの年表がありますが、このころから表装金襴を織っていらっしゃったのでしょうか。
〈山﨑さん〉 そうです。当時は個人の事業としてやっていて、会社設立が昭和41年です。最初は有限会社として設立して、その後、株式会社化しました。ちなみに、社名の岱は有限のころからの名前で、建勲さんで名付けてもらったと聞いています。
──現代ではコンピュータ制御の織機を使っているところも多いなか、紋織りに紋紙が使われています。
〈山﨑さん〉 ほかの織物と比べて、金襴は繰り返しの単位が小さいことが多いのです。そのため紋紙にかかるコストが小さいのが理由です。紋紙で制御する織機は、西陣織会館3階の展示室にも模型があります。
現在、産業資材を織る織機は、金属製のヘッドのついた棒で糸を運ぶもの、水で糸を飛ばすものなどがあり、ここで使われているものよりずっと速く織れます。こうした織機は、西陣で使われるものと比べて、糸を上下に動かす開口部が小さく、使われている糸も頑丈なのです。西陣金襴を織れる織機は開口部が大きいため、時間がかかります。
──金襴では、何色程度使うものなのでしょうか。
〈山﨑さん〉 多くて四色程度です。もともと薄地にする必要があるので、あまり色糸を使うと厚みが出てしまいます。
──今月末から来月は、ジャパン・クリエーションと西陣織大会、新市場開拓作品展があります。
〈山崎さん〉 ジャパン・クリエーションと新市場開拓作品展には、クッションを含め用途を限定せず、目新しいもの、目立つものなどを出品する予定です。
──ホームページにもクッションの記載があります。
〈山﨑さん〉 海外では、生地を買ってハンドクラフトする文化があります。通常の帯地を買うと何十万としますが、クッション用に作った生地なら手の届く価格に収まっています。西陣織会館でも、そういった需要で売れているものがあるようです。
──これから力を入れていきたい商品はありますか。
〈山﨑さん〉 やはり生地です。小ロットでも、お客さんの要望に応えて作れることが強みだと考えています。デザインを持ってきていただき、相談しつつ特別に生地を織ることもしています。多くはありませんが、こうしたフルオーダーでの注文をお受けしたりもしています。
多数の注文が入った場合は、他社さんに仕事をお願いすることがあります。ネクタイと組織が似ていることから、ネクタイ屋さんにお願いする場合もあります。他社の商品を仕入れて卸すこともしていますし、西陣の横のつながりは強い方と考えています。
──時代が変わるにつれ、西陣も大きく変化しています。
〈山﨑さん〉 冠婚葬祭などが分かりやすいですが、昔は生活の一部にあったものが、身近ではなくなってきています。お茶をはじめとして、昔は教養として身に着ける必要があったものが弱ってきています。需要のあるものを作っていくため、先ほどのフルオーダーの生地のように、お客様と一緒にモノづくりをしていきたいと考えています。伝統を守りつつ、新しいものを作っていくつもりです。